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結局、今から行動するしかない ─「正しい遠回り」が成功への最短ルート

目次

はじめに:「楽して早く成功したい」は幻想か?

私たちの多くは「できるだけ楽をして、リソース(労力・お金・時間)をかけずに最短で成功したい」と考えがちです。最近では、映画の内容を10分程度にまとめたファスト映画や書籍の要約動画が流行し、TikTokやYouTube Shortsなどの超短尺コンテンツで情報収集する人も増えています。いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」重視の風潮で、AIが生成した要約だけ読んで物事を済ませようとする人さえいます。しかし残念ながら、こうした近道志向で本当に大きな成果を得るのは容易ではありません。実際のところ、成功というものは試行錯誤や失敗の繰り返しの先にしか手に入らないからです。

図:人がイメージする「成功パターン」(青線)と現実の「成長曲線」(赤線)の違い。多くの人は努力すれば直線的に成果が出ると期待するが、実際には初期にほとんど結果が出ない停滞期があり、そのギャップに不安を感じ途中で諦めてしまいがち。しかし諦めず継続して試行錯誤を積み重ねた者だけが、ある時点から成果が急激に現れる急成長フェーズに到達する。

「最短で成功を掴みたい」という願望自体は誰しも持つものですし、それ自体悪いことではありません。問題は、「本当にそれが可能なのか?」という点です。実のところ状況は常に変化しており、過去の成功パターンをそのまま再現してもうまくいかない場合がほとんどです。環境や前提条件が変われば、かつて通用した方法論も通用しなくなります。つまり完全に再現性のある成功法則など存在しないのです。にもかかわらず、楽な近道ばかり探していては、目先の小さな効率は上がっても本質的な力をつけることはできません。ひょっとすると短期的には成果が出るかもしれませんが、それは砂上の楼閣であり、環境の変化やちょっとしたトラブルで簡単に崩れ去ってしまうでしょう。

本記事では、「結局のところ成功するためには今から行動して経験を積むしかない」という一見当たり前の結論について、なぜそれが真理なのかを深堀りしていきます。「最短で成功するための正しい遠回り」とは何かを考え、近道主義の落とし穴や、失敗を織り込み成長していくプロセスの重要性を明らかにします。結果として、遠回りに見えてもそれこそが最終的には最短ルートになる理由を探っていきましょう。

成功は試行錯誤と失敗の先にしかない

冒頭で述べたとおり、本当の成功や価値ある成果物は、試行錯誤と失敗の積み重ねの先にしか得られません。なぜなら、私たちが直面する課題やビジネス環境は常に変化し続けており、一度うまくいった方法も次には通用しないことが往々にしてあるからです。失敗やエラーを経験しない限り、状況に応じた柔軟な対応力を養うことはできません。

たとえば新しいスキルを身につけるとき、一度も間違えず完璧に習得できる人はいません。スポーツでも芸術でもプログラミングでも、上達への道は試行錯誤の連続です。実際、人間の脳は失敗からこそ多くを学び、その過程で神経回路を再編成(リワイヤリング)して新しい知識やスキルを定着させていくことが知られています。効率的にマニュアル化されたお勉強だけでは身につかない職人的な勘や直感(暗黙知)も、無数の試行錯誤や予測不能なトラブル対応、五感を総動員した生々しい体験といった「非効率なプロセス」を通じてはじめて脳に深く刻み込まれるのです。言い換えれば、机上のインプットだけでは得られない実践知こそが真に価値あるスキルとなります。

さらに、繰り返しの失敗体験は脳やメンタルの適応力を高めるというメリットもあります。困難やストレスに直面したときにしなやかに適応し跳ね返る力を心理学では「レジリエンス」と呼びます。興味深いことに、この精神的な免疫力は安全で快適な環境(いわゆるコンフォートゾーン)にとどまっている限り決して鍛えられないことが分かっています。あえて自分の能力の限界を少し超える挑戦(ストレッチゾーンへの挑戦)をして、それを乗り越える――このプロセスによって初めて脳のストレス対処回路が強化され、予期せぬ危機に直面しても冷静かつ創造的に問題解決できるしなやかで強靭な自分が育まれるのです。要するに、失敗や困難を経験してはじめて、人は変化に強くなるということです。

私たちは失敗から学ぶことでしか前進できません。一見遠回りに思えても、トライ&エラーを経ることでしか到達できない境地があるのです。例えば発明王エジソンが電球を発明した際、フィラメント素材の探索で「1万通りのうまくいかない方法」を発見したという有名な逸話があります。それほどの失敗の果てにこそ、人類に光をもたらす偉大な成功があったわけです。成功とは決して一直線の道ではなく、紆余曲折(うよきょくせつ)の連続だという点を肝に銘じる必要があります。

「タイパ至上主義」の落とし穴:近道は本当に近道か?

現代はとにかく効率性が持て囃される時代です。何事もコストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)が重視され、無駄なく最短で成果を出すことが善だと考えられがちです。しかし、この効率至上主義的な思考には危険な罠が潜んでいます。

効率化を極限まで追求すると、一見ムダに思えるものを徹底的に排除しようとします。ところが皮肉なことに、そうした「ムダ」や「非効率」の中にこそ、人間や組織にとって本当に重要な価値が潜んでいる場合が多いのです。効率的に数値化・言語化できるスキルばかり追い求めていると、その過程で測定不能で言語化しにくい大事な価値(例えば創造性や直感力)を静かに失ってしまう恐れがあります。

例えば、「本を丸ごと読むのはタイパが悪いから要約サイトで済ませよう」「動画の倍速再生で知識をインプットしよう」といった行動は、一見賢い時間節約術に思えます。確かに情報処理の速度は上がるかもしれませんが、果たしてそれで得た知識は本物でしょうか? 要約や断片情報は効率よく表面的な知識を与えてくれますが、その陰で深い理解や自分なりの思考力、創造的発想の機会を奪っている可能性があります。実際、大学生の読書離れが指摘される中、「何かを学ぶ際にYouTubeやTikTokなど手短な映像・まとめ情報で済ませる若者が多い」という声もあります。しかし、知の巨人たちは総じて大量の読書や思索という非効率な営みを重ねています。彼らが得ている洞察や独創性は、決して短い要約ビデオから生まれたものではないでしょう。

また、効率化ばかりに目を奪われると、予想外の発見(セレンディピティ)を得るチャンスも失われてしまいます。常に最短ルートだけを急いでいる人間は、寄り道の途中で偶然出会うかもしれない珍しい花や美しい湖に気づくことはできません。実際、多くのイノベーションは予定調和の道筋から逸れた「回り道」や「寄り道」の中で出会った一見無関係な知識や経験同士が予期せず結びつくことで生まれてきました。徹底した効率化はこのような「創造的な無駄」すら排除してしまいますが、その無駄の中にこそ未来の飛躍の種が潜んでいるのです。

もちろん、闇雲に非効率なことをすればよいというわけではありません。ポイントは、「近道しようとして本質的に大事なプロセスまで省いてしまっていないか」を見極めることです。長い目で見れば、効率の良い近道よりも価値のある遠回りの方が、結果的に大きなリターンをもたらすケースが少なくありません。例えば新人教育においても、一見無駄に思える泥臭い経験を積ませた人材の方が、マニュアル通りにしか動けない人材より将来的に大きな成果を上げる──といったことは往々にして起こります。ですから、「タイパ最優先」で楽な道ばかり選ぶのではなく、意義のある苦労にあえて身を置く勇気が必要なのです。

ではその「意義のある苦労」とは具体的に何でしょうか?次の節で詳しく見ていきましょう。

遠回りが育む3つの力:暗黙知・レジリエンス・セレンディピティ

遠回りに見える試行錯誤のプロセスは、単に根性論的な「苦労自慢」ではなく、将来の成功に直結する重要な力を私たちに与えてくれます。ここでは、非効率に見える遠回りから得られる3つの資産について考えてみましょう。

  • 暗黙知(あんもくち)の獲得: 暗黙知とは言語化や数値化が難しい経験知のことです。例えば熟練職人の「勘」や、優秀な営業マンが顧客の表情から本音を読む洞察力などがこれに当たります。こうした暗黙知はマニュアル化された効率的トレーニングからは生まれません。無数の試行錯誤や予期せぬトラブルへの対処、五感をフル活用した体験など、カオスで非効率なプロセスを通じてのみ脳に深く刻まれるのです。遠回りに見える現場体験を積むことで初めて得られる生きた知恵こそ、他者と差別化できる真の実力となります。
  • レジリエンスの醸成: 先ほど述べたように、レジリエンス(逆境からの回復力・適応力)は困難に挑戦し乗り越える過程でしか養われません。常に安易な道や安全策ばかり選んでいると、いざ予想外のトラブルに見舞われた時に脆く崩れてしまいます。あえて苦労を買って出て、小さな失敗や挫折を経験しておくことで、心は打たれ強くなり柔軟性を増します。このレジリエンスという「心の器」は、成功を持続させる上で不可欠な資質です。大きな成果を手にしても、その重みに耐え得る精神力がなければ、一瞬にして全てを失いかねません。逆に言えば、遠回りで苦労した分だけ、どんな成功にも揺るがない自分が出来上がっていくのです。
  • セレンディピティの誘発: セレンディピティとは「思わぬ幸運な発見」を意味します。計画通り一直線に進むだけでは得られない、新たなアイデアやイノベーションは、遠回りや寄り道の途上でふと見つかるものです。歴史的な発明や発見も、研究者が本来の目的以外の副産物や偶然のヒントから着想を得た例が少なくありません。「無駄な遠回り」の中にこそ、未来を切り拓くタネが眠っている可能性があるのです。効率優先ではこうした偶発的チャンスを摘み取ってしまいますが、あえて余白のあるプロセスをとることで思いがけない幸運に出会えるかもしれません。

以上のように、遠回りには無駄以上の価値があるのです。ただし注意すべきは、それが「質の高い苦労」かどうかを見極めることです。根性論に陥って再現性のないただの我慢大会をしても意味がありません。大切なのは、その遠回りによって新たな学びやスキルが得られるか、あるいはチームや自分が成長するかという視点です。無意味な長時間労働や理不尽なしごきは単なる消耗ですが、試行錯誤の中でスキルを習得したり問題解決力が上がったりする苦労は「価値ある投資」です。

結局のところ、「苦労は買ってでもせよ」という昔ながらの教えには理に適った側面があるのです。ただしやみくもに苦しめという意味ではなく、「自らを成長させるための建設的な苦労」を恐れるな、ということです。効率一辺倒のコスパ・タイパ主義の罠に陥らず、長期的視点で自分に資産をもたらす遠回りを受け入れましょう。それが巡り巡って最短で大きな成功を収める鍵となります。

巨額の成果を得るには「器」が必要

ここで一つ具体的な例を考えてみましょう。仮にあなたが突然巨額の資金を手に入れ、それを運用する立場になったとします。多くの人にとって、お金は欲しいものの代表であり、大金を得られれば人生安泰だと考えがちです。しかし、大金を扱うにはそれ相応の知識やメンタル(マインドセット)、そしてレジリエンスといった「器」が不可欠です。それらが備わっていない人が大金を手にすると、かえって不幸になるケースが少なくありません。

実際、海外では「宝くじ高額当選者の約70%が数年以内に破産する」という統計がしばしば引用されます(※この数字自体は俗説で厳密な裏付けは乏しいものの、多くの当選者が悲惨な末路を辿るのは事実です )。日本でも、臨時収入を浪費してしまったり詐欺に遭ったりして、結局は借金まみれになってしまったという宝くじ当選者の逸話がいくつも報道されています。なぜこのようなことになるのでしょうか?

理由は簡単で、突然大金を手にしてもそれを適切に管理・運用するスキルや精神的な成熟が備わっていなければ、財産は長続きしないからです。お金は強力なパワーです。刃物と同じで、それを扱うだけの器量がなければ自分を傷つけてしまいます。宝くじ当選者の話が示唆するのは、「結果(大金)だけポンと手に入れても、プロセスを経ていない人は結局その結果を保持できない」ということです。逆に言えば、大きな成功を手にしてそれを持続させるためには、その成功を支えられる自分自身の成長が不可欠なのです。

ビジネスの世界でも同様です。運良くビギナーズラックで成功したスタートアップが、その後の環境変化についていけず失速することがあります。一方、創業当初に失敗を重ね資金繰りに苦労しながらも徐々に学習していった企業は、環境変化にも柔軟に対応し長期的な成長を遂げる傾向があります。前者には成功を支える土台(器)がなく、後者には苦労の中で鍛え上げた器があると言えるでしょう。スポーツ選手でも若くして才能だけでチヤホヤされた人が伸び悩み、地道な努力を積み重ねた人が大成する例は枚挙にいとまがありません。

失敗や苦労の過程で身につけた知識・技術・精神力こそが、得られた成功を真に活かし持続させる「器」になるのです。それなしに結果だけを求めても、砂漠に水を撒くように無駄になってしまうでしょう。ですから、大きな目標を持つのは素晴らしいことですが、それに見合う自分を育てるプロセスを軽んじてはいけません。むしろ目標達成までの道のりで自分をどれだけ成長させられるかにフォーカスすべきです。結果はその副産物として後からついてくる――それくらいの姿勢で臨んだ方が、結局は大きな成果を手にできます。

失敗を織り込んで成功から逆算する

ここまで、遠回りでも行動し失敗から学ぶことの大切さを見てきました。では「最短で成功する」ためには、具体的にどのような心構えや戦略が必要なのでしょうか? 鍵となるのは、あらかじめ失敗を計算に入れた上で、理想の成功像から逆算して計画を立てることです。

誤解してはいけないのは、「最短で成功する=失敗しないこと」ではないという点です。むしろ「最短で成功するためにはいかに上手に失敗するか」が重要なのです。現代のイノベーションの世界では「フェイル・ファスト(Fail Fast)」という考え方があります。直訳すると「素早く失敗しろ」ですが、その本質は「致命傷にならないうちに仮説検証を行い、ダメならすぐ軌道修正して次に活かせ」という意味です。大事なのは小さく素早く失敗を重ねて学び、成功に至るプロセスを加速させることなのです。

これは個人の成長にも当てはまります。例えば新しいスキルを習得するとき、完璧主義で失敗を恐れていては一向に前に進みません。最初は不恰好でもいいからどんどん挑戦して、小さな失敗を積み上げる。そしてその都度学習し修正していく。この試行錯誤サイクルの回転速度を上げることが、結果的に成功への時間を短縮します。要するに、遠回りに見えるプロセスを高速で回すわけです。成功への近道は、必要な遠回りをできるだけ機敏にこなすことだと言えます。

そのためには計画段階で「どんな失敗が起こり得るか」を織り込んでおくことが有効です。事前にリスクを洗い出し、ここで失敗したら次はこうリカバーしよう、とシミュレーションしておけば慌てずに済みます。また、絶対に致命的な打撃とならない範囲でチャレンジすることもポイントです。企業経営で言えば、社員に「修理可能な失敗」をあえて経験させることが推奨されています。たとえば若手に小規模なプロジェクトのリーダーを任せ、予算管理や進行の難しさを痛感させるが、背後では上司がセーフティネットを張っておき大崩壊は防ぐ――そうした安全網付きのチャレンジから得られる経験値は計り知れません。個人でも、生活が破綻しない範囲の挑戦や投資から始め、徐々にスケールを大きくしていくのが良いでしょう。

また、「成功した自分」の姿を具体的に思い描き、そこから逆算して今やるべきことを洗い出すことも大切です。将来のゴールを明確にイメージすると、自ずと必要なステップや乗り越えるべき課題が見えてきます。

その際、「この段階でこうつまづくかもしれない」というポイントも出てくるでしょう。しかしそれで良いのです。むしろ失敗ポイントが見えるということは、事前に対策を講じたり学習したりできるということです。例えば「英語のプレゼンで失敗するかも」と思えば、早めに何度もリハーサルしてフィードバックをもらえばいい。予測される失敗を先取りして対策しつつ、それでも起こった想定外の失敗からは真摯に学ぶ。このようにプランニングに失敗込みで臨むことで、無駄な遠回りを避けつつ有益な遠回りだけを経験値として積むことができます。

要は、「失敗しないための準備」をしながら「失敗から最大限学ぶ」姿勢を持つことです。これができれば、失敗はただの時間ロスではなく成功への階段になります。何も考えず失敗するのではなく、失敗を計画と成長サイクルに組み込んでしまうのです。こうすることで、失敗そのものの数や深刻度は最小限に抑えつつ、得られる学びは最大化できます。これこそが最短で成功するための戦略的遠回りと言えるでしょう。

イシューを見極め、「犬の道」を避けよ

さて、「遠回りも厭わずに挑戦しよう」と言うと、ひたすら努力と根性で突き進めというメッセージに聞こえるかもしれません。しかし本質はそうではありません。努力は大事ですが、努力の方向を間違えれば徒労に終わる可能性があります。そこで参考になるのが、安宅和人氏の著書『イシューからはじめよ』で提唱されている「イシューを見極める」という考え方です。

「イシュー」とは、平たく言えば「本当に答えを出すべき重要な課題」のことです。安宅氏によれば、仕事や研究で高い生産性を発揮する人は、決して作業スピードが超人的に速いわけではなく、解くべき課題(イシュー)の選定が抜群に上手いのだと言います。世の中には実際に解決する価値のある問題はごくわずかしかありません。したがって、最初に「取り組むべき課題は何か」を見極めることに集中しなければ、大半の努力は無駄になってしまうのです。

安宅氏は、課題解決のアプローチには2通りあると説明します。一つは「解の質(解決策の完成度)を上げてから課題の重要性(イシュー度)を上げる」道、もう一つは「課題の重要性を上げてから解の質を上げる」道です。そして前者のアプローチを「犬の道」と呼び、絶対に陥ってはならないと警鐘を鳴らしています。

具体例で考えてみましょう。あなたが売上アップのために解決すべき課題が10個あるとします。そしてそれぞれに対して考えうる解決策が10個ずつあるとします。このままやみくもに全部試そうとすれば、10×10=100通りの施策を試すことになります。しかし時間も資源も有限ですから、これは現実的ではありませんし無駄も多いですよね。そこで、まず「取り組むべき課題」を厳選し、最も重要度の高い課題に絞り込む。そして次に、その課題を解決するための最も質の高い解決策に集中する。これが最短ルートになります。

一方、こうした手順を踏まずに「とりあえず全部やってみよう」「量をこなせば当たるだろう」と全パターンに手を出すようなやり方こそが、安宅氏の言う「犬の道」です。耳が痛いという方もいるかもしれません。思い当たる節はないでしょうか? 「とりあえず根性で全部試せば、そのうち何とかなるだろう」という態度です。確かに我武者羅な行動力は一見美徳のように思えますが、戦略なき努力は膨大な時間を浪費し、挙句の果てに重要でない問題を一生懸命解決して達成感だけ味わって満足してしまう危険すらあります。安宅氏も「『とりあえずやってみよう、やりながら考えよう』では時間がいくらあっても足りない。全部やったという達成感は厳しい言い方をすれば単なるまやかしに過ぎない」と述べています。

要するに、努力する前にまず正しい努力の方向を定めよということです。最初にイシュー選定(何に答えを出すべきか)を誤れば、どんなに頑張っても成果に結びつかない可能性が高いのです。逆に、イシューさえ見極めてしまえば、後は解決策を考えることに集中すればよく、余計な遠回りをしなくて済みます。

勘違いしてはいけないのは、「犬の道を避ける=楽をする」という意味ではない点です。むしろ重要なイシューを選ぶこと自体が難しく、時間を要する作業です。また最重要課題に真正面から取り組むのは、多くの場合困難を伴います。しかし、その正しい遠回りこそが王道なのです。一見近道に見える安易な努力(犬の道)を避け、必要だけれど困難な課題(王道)に敢えて遠回りして取り組む。これが結果的に最短で大きな成果を生むことになります。

安宅氏の教えを借りるなら、「根性に逃げるな」という言葉が響きます。つまり、考えるべきことから逃げて「とりあえず手を動かす」ことで安心してはいけないということです。本当に成果を出す人は、闇雲に動き回る前にまず 考えるべきこと(イシュー)を考え抜いている のです。その上で、決めた方向に対しては全力で行動する。これが考える遠回り+行動の近道のハイブリッドなアプローチと言えるでしょう。

おわりに:最終的に「行動するしかない」

長い議論となりましたが、最後にもう一度核心に立ち返りましょう。ここまで見てきたように、成功を収めるためには避けて通れないプロセスというものがあります。それは行動し、失敗し、学び、修正し、また行動するという地道なサイクルです。このサイクルを高速で回すために戦略的思考(イシュー選定)も必要ですが、いくら机上で完璧な戦略を練っても実際に行動しなければ一歩も前に進みません。

結局のところ、タイトルにも掲げた通り「今から行動するしかない」のです。頭の中でいくら成功のシミュレーションをしても、現実は計画通りにはいかず思わぬ困難が次々と出現します。その度に計画を修正し、自分自身をも更新していく作業が不可欠です。そしてそれは行動しなければ決して得られない学びなのです。

最初の章で触れたように、多くの人は楽して早く成功したいと願います。しかし皮肉にも、遠回りを厭わず地道に試行錯誤を積んだ人が、結果的には誰よりも早くゴールに辿り着くものです。大事なのは、「近道しよう」と焦って闇雲に走り出すのではなく、「多少遠回りでも正しい道」を選んで一歩を踏み出すことです。その一歩を踏み出すのは他でもない今この瞬間であり、あなた自身です。

どうか失敗を恐れないでください。失敗はそれ自体が貴重な財産です。もちろん同じ失敗を繰り返すのは望ましくありませんが、失敗なくして成功はあり得ません。失敗したら、なぜ失敗したのかを考え、次に活かせば良いのです。その蓄積がやがて誰にも真似できないあなただけの成功パターンを築き上げてくれるでしょう。

最後に、もう一度強調します。成功への最短ルートは、「正しい遠回り」を恐れず今すぐ行動を始めることです。試行錯誤を通じて脳も心も成長し、やがては環境の変化にも動じない強さと柔軟さを身につけるでしょう。遠回りの中で築いた自分の実力と自信こそ、どんな成功も支えうる揺るぎない土台となります。

「千里の道も一歩から」と言います。どうぞ今日という日を、未来の成功に向けた第一歩を踏み出す日にしてください。その歩みはたとえ遠回りに見えても、振り返ったとき最短コースだったと気づくはずです。あなたの挑戦の旅路に幸あらんことを。

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